2025.07.08

お知らせ

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LINEミニアプリ版 NFT配布ツール『キリフダ』が、LINEヤフー社によるLINE API Use Caseに取り上げられました

LINEミニアプリ版 NFT配布ツール『キリフダ』が、LINEヤフー社によるLINE API Use Caseに取り上げられました

LINEミニアプリで楽しむ環境行動記録「もりからの手紙」のサービス概要

「もりからの手紙」は、東急不動産株式会社とキリフダ株式会社が共同で長野県・蓼科リゾートタウンに導入した、環境行動記録型のLINEミニアプリです。
来場者はホテルのアメニティを持参して消費を抑えたり、リネン交換をスキップしたり、森林保全プログラムに参加して知識を深めたりといった環境配慮行動に取り組むと、その記録がブロックチェーン上で発行されるNFTとして可視化されます。
施設内に設置された木彫りのQRコードをスマートフォンで読み込むとLINEの友だち追加とLINEミニアプリ起動が自動で行われ、「NFTを受け取る」ボタンを押せば、アニメーションで“デジタル切手“がユーザーアカウントに貼られる体験が完成します。LINE公式アカウントのリッチメニューからはいつでもマイページにアクセスでき、収集した切手を眺めながら、一定数集めるごとに施設内で使えるクーポンへ交換できる仕組みは、まさにポイ活感覚の環境貢献プログラムです。

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東急不動産株式会社は企業全体で脱炭素投資および森林保全活動に注力してきました。とりわけ蓼科リゾートタウンの森は、適切な間伐と保全管理によって維持されるべき地域資源です。しかし「環境に良い行動をしてください」と案内するだけでは、来場者が主体的に選択する動機づけにはつながりませんでした。そこで「学びながら楽しむ体験」を融合させるデジタルコンテンツが必要とされました。 加えて、こうした環境貢献行動はゆくゆくカーボンクレジットへと集約される可能性があります。その際に「本当にこの来場者が環境に良い行動を行ったのか」を正しく記録することは極めて重要です。キリフダ株式会社はここに着目し、行動ログを改ざん耐性の高い証跡として残すNFTの活用を提案しました。 NFTであれば、単なる行動データだけでなく切手のような画像コンテンツを紐付け、来場者が自然とコレクションを楽しみながら「自らの環境貢献」を実感できる仕組みとなります。企業側にとっても、安全かつ確実にデータを蓄積・追跡できる本プロジェクトのシステムを提供しています。

LINEとの連携

LINEミニアプリを活用したきっかけ

NFTを受け取るためには通常、専用ウォレットのインストールやアカウント作成が必要であり、Web3への参入障壁となっていました。そこでキリフダは、LINE APIとLINE Front‑end Framework (以下、LIFF)を活用し、LINEミニアプリを立ち上げるだけでウォレット生成からNFT受け取りの事前準備を完了させる仕組みを構築しました。
担当者からも「LINEを起動するだけで複雑な手続きなしにNFTを受け取れるのが大きな魅力だった」と評価を得ています。LINE IDに紐付くため別のアカウント登録も不要で、特定のユーザーに継続的にメッセージを配信できる点も大きなシナジーです。
リリース直後から、来場者の反応は好評で、多くの方が「NFTが意識せずに手軽に受け取れるのが新鮮」「切手のデザインがかわいく、自然と集めたくなる」と語り、何気ない環境配慮が「知らず知らずのうちに貢献になる」という気づきを得ています。
また、テレビ東京の番組でも取り上げられ、環境アクションとデジタル体験を組み合わせた新しさが注目を集めました。森の中でも通信障害は限定的で、現場運用もQRコード設置と案内のみでスムーズに進んでおり、ユーザーUXの面でも高い評価を得ています。

システムの解説

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「もりからの手紙」の技術構成:LIFFとブロックチェーン技術のシームレス連携

クライアントにはLIFFをベースに、サーバーサイドでは、LINEログイン基盤と連携したユーザー認証やMessaging APIによるメッセージ送信機能などを実装しました。
ウォレット生成にはWeb3Auth、NFTの発行照会にはAlchemyを使用し、発行処理はGoogle Cloud Tasksで非同期キュー化しています。
ブロックチェーン特有のレイテンシーを気にせず体験を進めるため、重い処理はすべてキューに送り、ユーザーは待たずに次へ進めるUXを確保しています。LINEログインのセッションを活用し、ユーザーごとの環境行動履歴とNFT保有状況を安心して追跡できる仕組みです。

LINEミニアプリの環境でブロックチェーンを動かすには、まずLIFF独自の初期化フローを厳密に守る必要がありました。LINEミニアプリはLINE内のサブウィンドウとして読み込まれるため、多段階の初期化工程を挟みます。そこへさらにウォレット生成やNFT発行といったLIFFとは別の初期化が必要なブロックチェーン処理を「必要な条件が揃った直後」に正しく起動させる設計が求められます。
このタイミングを誤ると、初期化が失敗したり、ユーザーが白紙画面のまま待たされるなど、体験を大きく損ねる恐れがあり、実装には細心の注意を要しました。

さらに、LINEミニアプリは単独のネイティブアプリとは異なり、チャット画面やリッチメニューといった既存機能との連携が鍵を握ります。たとえば、NFTを受け取った直後にMessaging APIで確認メッセージを送信したり、逆にトーク画面のボタンからミニアプリを立ち上げてNFT発行に誘導したりする設計には、LINEの導線を意識したシナリオ設計が欠かせませんでした。ただ技術を組み合わせるだけでなく、「ユーザーにとって自然に感じられる体験」をどのように組み立てるかが最大の挑戦となり、フロントエンドエンジニアリングとプロダクト企画の両面で創意工夫を重ねた部分です。

ローンチ直後の手応えと現地運用のリアル

森の中に位置する蓼科リゾートタウンでは、携帯キャリアの通信が届きにくいエリアもありましたが、実際のところユーザー体験を大きく妨げるほどではありませんでした。運用面では、キリフダがLINE公式アカウントの管理を一手に担い、現地スタッフには木彫りのQRコードの設置と利用者案内のみを依頼。 これまでのリゾート特典と大きく変わらない仕組みだったこともあり、利用者もスタッフも混乱なく体験を楽しんでいただいています。

リリース後に浮かび上がった改善点としては、NFT切手をクーポンに引き換える「利用消込」操作がわかりにくいという声がありました。特典交換画面や案内文言のUIをより直感的に整理し、スムーズに引き換えられるようデザインの磨き込みを進めています。
一方、利用者からは「NFTを意識せずに受け取れる」「切手のデザインが可愛くて集めたくなる」「遊びながら環境知識を身につけられる」といった好意的な反応が多数寄せられています。テレビ東京の番組でも紹介され、来場者が「自分が知らず知らずに環境貢献している」という実感を得られた点は、東急不動産株式会社からも高く評価されています。

今後の展開 :横断した環境貢献プログラムへ

「もりからの手紙」で蓼科リゾートタウンの来場者に提供している環境貢献型クーポンは、今後、東急不動産株式会社が保有する他の都市型施設にも広げていけたらと思っています。例えば、渋谷フクラスや代官山のホテル、さらには商業施設など、さまざまなロケーションで「森で貢献した証」を消費できる仕組みを構築すれば、蓼科での行動が都市部でも価値を生む、逆もまた然りの相互送客が可能になります。 たとえば、東京のカフェでマイバッグ持参のアクションを取れば、蓼科で利用できる小さな特典が得られる――。こうしたグループ横断のインセンティブ設計によって、お客様の環境配慮行動を継続的に喚起し、東急グループ全体でサステナブルな顧客体験を深化させていくことが狙いです。

LINEミニアプリとNFTが融合した本サービスは、環境貢献に限らず、あらゆるロイヤリティプログラムへ応用可能です。近年、音楽やスポーツなど「推し活」分野で、ファンの参加や拡散行動をNFTに記録して可視化する動きが活発化しています。LINE公式アカウントを通じた1対1のコミュニケーション機能と、デジタルグッズとして販売・収集できるNFTを組み合わせることで、従来のECやSNS以上に深いファンエンゲージメントを実現できます。キリフダでは今後、この領域での技術検証やパートナーシップの拡大を図り、LINEプラットフォーム上で「デジタルとリアルをつなぐWeb3施策」の新たな標準を打ち立てていきたいと考えています。

これからLINE APIを活用される方に一言

最後に、開発者や企画ご担当の皆さまへお伝えしたいのは、LINEのAPIを活用すれば、国内9700万人以上のLINEユーザーを一気通貫でポテンシャルユーザーとして取り込める点が何よりの強みだということです。
LINE公式アカウントやLINEミニアプリはもちろん、最近ではeKYC連携やBeaconを使ったプッシュ配信など、オンラインとオフラインをシームレスにつなぐ機能が着々と整備されています。本プロジェクトのように、ブロックチェーンやNFTと組み合わせても、ユーザーが迷わずに体験を始められる設計さえあれば、Web3領域への参入障壁を大きく下げることが可能です。私たちキリフダは、こうしたLINEの多彩なAPIとブロックチェーン技術を組み合わせたサービス設計をこれまでも手がけてきました。もし「LINEでこんなことを実現したい」「Web3を使った新しいUXを試したい」といったアイデアがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。LINEというプラットフォームを活用し、一緒に次世代のユーザー体験を創造していきましょう。