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株式トークンは様子見の段階を過ぎた JPMorganなど40社超が本番取引に参加した

株式トークンとは、株式の価値をブロックチェーン上のトークンとして表現し、ウォレットで保有・売買できるようにした商品です。誰が株式を保管し株主名簿を管理するかという座組しだいで投資家の立場は変わり、発行体への請求権のみの型から、NasdaqとDTCのように従来の株式と同一の権利を保つ型まであります。

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執筆
キリフダ株式会社

この記事の要点

  • 2025年9月から12カ月の間に、Galaxy Digital(自社株のトークン化)、Nasdaq(SEC承認)、NYSE(ルール変更申請)、DTC(3年パイロット)と米国株式市場の中枢が相次いで動き、2026年7月には40社超が参加する初の本番取引が処理された
  • 座組は「誰が株主名簿を持つか」で3類型に分かれる。米国外向けのオフショア・ラッパー型、SEC登録事業者が権利を維持する名簿直結型、同一CUSIPのままトークン化する市場インフラ統合型
  • 残高は約4,000億円(25億米ドル)で米国株時価総額の約0.004%。トークン化資産全体の予測は約320兆円(McKinsey、2030年)から約4,800兆円(Standard Chartered、2034年)まで15倍開いている
  • 同じ12カ月に世界取引所連合・SIFMA・Citadel Securities・JPMorganは反対書簡や面会でSECに慎重対応を求めた。防衛と取り込みの同時進行はイノベーションのジレンマの典型的な現れ
  • 既存側の応答は「同一CUSIP・同一権利のままトークン化」。権利を削って商品性を先行させた新規参入側との違いは、規制がどちらの競争条件を認めるかに集約されつつある

反対書簡と初の本番取引が同じ12カ月に起きた

2025年9月3日、Nasdaq上場のGalaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)は、SEC(米証券取引委員会)に登録された自社の普通株式そのものをSolana上のトークンにしました。上場企業がSEC登録株式を主要ブロックチェーン上でトークン化した初めての事例です[1]。それから12カ月の間に、米国株式市場の中枢が相次いで動きます。SECは、米国のほぼ全ての上場証券を保管するDTCによる3年間のトークン化パイロットを認めました[2]。Nasdaqはトークン形式で株式を取引するルール変更の承認を得て[3]、NYSE(ニューヨーク証券取引所)も同種の申請を出しています[4]。清算・保管を担うDTCC(DTCの親会社)は、50社超の金融機関を集めてサービス開発を進めています[5]。2026年7月には、トークン化した株式・ETF・米国債で初の本番取引を処理しました[23]

同じ12カ月に、正反対の動きも起きています。世界取引所連合(WFE)は2025年8月、トークン化株式は株式を「模倣」するが同等の投資家保護を欠くとして、SECなどに規制強化を求める書簡を送りました[6]。米国証券業金融市場協会(SIFMA)は、トークン化株式に広い規制免除を与えないようSECに求めました[7]。2026年1月には、Citadel SecuritiesとJPMorganがSIFMAとともにSECへ面会し、同じ証券には同じ規則を適用すべきだと主張しています[8]。反対と参入が同じ業界の中で同時に進む状態は、後述する「イノベーションのジレンマ」の教科書的な構図です。

なお、トークン化株式の仕組みそのものは別稿「「トークン化株式」がHyperliquidで暗号資産の取引高を逆転」で解説しています。現物裏付け型と合成型の違いや、取引高が暗号資産を上回った経緯はそちらをご覧ください。本稿はその続編として、「誰がどの役割で参入しているか(座組)」「市場はどこまで大きくなりうるか」「既存金融に何が起きるか」の3点に絞ります。

株式トークンの座組は「誰が株主名簿を持つか」で3つに分かれる

座組とは、金融商品を成立させるための役割分担のことです。金融の実務では、新しい商品を評価するときにまず「誰が顧客と契約するか」「誰が資産を預かるか」「誰が損失を負うか」を確認します。株式トークンにこの問いを立てると、分かれ目は「誰が株主名簿を管理し、投資家が何への権利を持つか」に行き着きます。この軸で整理すると、現在動いている座組は3つに分かれます(表1)。

表1 株式トークンの3つの座組
項目オフショア・ラッパー型名簿直結型市場インフラ統合型
代表例Backed(xStocks)、OndoSuperstate、DinariNasdaq、NYSE、DTC
株式の保管発行体が海外の器で現物を保管SEC登録事業者の管理下で現物を保管DTCの保管をそのまま維持
株主名簿載らない(トークンは発行体への請求権)名簿に反映(Superstateは名簿自体をオンチェーン化)従来の名簿・CUSIPを維持
配当・議決権配当相当額のみが多く議決権なし配当・議決権あり(設計による)従来の株式と同一
対象投資家米国外の投資家中心KYC済みウォレット(米国内を含む)取引所の会員経由(従来どおり)
規制上の位置づけ国・地域ごとに未確定名義書換代理人・ブローカーとしてSEC登録SEC承認のルール+DTCパイロット

オフショア・ラッパー型は、発行体が米国外の器(SPV)で現物株式を保管し、それを裏付けにトークンを発行する座組です。投資家が持つのは株式ではなく発行体への請求権で、議決権はなく、対象も米国外の投資家に限られます。KrakenやBybitで取引されるxStocksがこの型で、詳細は前編の記事で扱いました。

名簿直結型は、SEC登録の名義書換代理人(トランスファー・エージェント。株主名簿の記録・更新を担う事業者)がトークンと株主名簿を直結させる座組です。Galaxy Digitalの事例では、Superstate(スーパーステート)が名義書換代理人を務めます。株主名簿そのものをオンチェーンで更新するため、KYC(本人確認)を済ませた投資家のウォレット間で、実際のクラスA普通株式が移転します[1]。Dinari(ディナリ)は名義書換代理人の登録に加えて、子会社がFINRA(米金融取引業規制機構)に登録したブローカーです。2026年8月4日、S&P500全銘柄を含む724銘柄を米国内の投資家に開放しました。投資家はセルフカストディ(自分のウォレットでの保有)のまま配当や議決権を保持し、決済にはステーブルコインのUSDCを使います[9][10]

市場インフラ統合型は、既存の取引所と保管振替機関がトークン化を取り込む座組です。SECが2026年3月18日に承認したNasdaqのルール変更では、トークン形式の株式も従来の株式と同じCUSIP(証券識別コード)・同じティッカーを使います。株主の権利も同一で、従来の株式と同じ注文板で取引されます[3][12]。裏側ではDTCのパイロットが、参加者の選択に応じて保有記録を分散台帳上のトークンとして記録します[2]。このパイロットは2026年7月15日に最初の本番取引を処理しました[23]。投資家から見える商品性はほぼ変わらず、変わるのは記録と決済の基盤です。役割ごとの主なプレイヤーは図1にまとめました。

図1 株式トークンの座組と主なプレイヤー(2026年8月時点)

コスト構造の面では、名簿直結型が既存の権利移転の事務を大きく単純化します。既存の株式では、証券会社・清算機関・保管機関・名義書換代理人がそれぞれ帳簿を持ち、互いの記録を照合して決済(T+1、約定翌営業日)が成立します。名簿直結型では約定と同時に株主名簿が更新され、照合すべき帳簿は実質1つになります[1]。コスト削減額の公表値はまだ少ないものの、清算・保管の当事者であるDTCC自身が、担保管理の自動化を掲げてトークン化基盤に投資しています[5][16]。既存インフラ側が事務コストの圧縮余地を認めている証拠といえます。

株主名簿から取引所、清算まで、市場の中枢が1年で動いた

既存金融プレイヤーの参入は、2025年秋から加速しました。時系列で並べると、防衛(反対)と参入が交互に起きていることがわかります(表2)。

表2 株式トークンをめぐる既存金融の動き
時期出来事性格
2025年8月世界取引所連合(WFE)がSECなどに書簡。第三者による株式のトークン化への規制強化を要請[6]防衛
2025年9月Galaxy DigitalがSEC登録の自社株をSolana上でトークン化(上場企業初)[1]参入
2025年9月Nasdaqがトークン形式の取引を可能にするルール変更をSECに申請[12]参入
2025年11月IOSCO(証券監督者国際機構)がトークン化の投資家保護リスクを報告[13]警鐘
2025年12月SECがDTCの3年間のトークン化パイロットにノーアクションレターを付与[2]容認
2026年1月Citadel Securities・JPMorgan・SIFMAがSECに面会し、同一規則の適用を主張[8]防衛
2026年3月SECがNasdaqのルール変更を承認。同一CUSIP・同一権利でのトークン化が可能に[3]参入
2026年4月NYSEが同種のルール変更を申請(即時発効)[4]参入
2026年5月DTCCが50社超の作業部会を組成し、トークン化サービスの段階稼働の計画を公表[5][16]参入
2026年7月DTCCが株式・ETF・米国債のトークン化で初の本番取引を処理。JPMorgan・BlackRockを含む40社超が参加[23]参入
2026年8月Dinariが米国内の投資家に724銘柄を開放。配当・議決権を維持[9][10]参入

DTCのパイロットの中身は、規模の割に慎重です。SECのノーアクションレター(法執行を勧告しないという当局スタッフの確認)は3年間の時限付きで、対象はRussell 1000構成銘柄・主要な指数連動ETF・米国債に限られます。参加は任意で、トークン化された持分はDTCのリスク管理上の担保価値を持ちません[2]。つまり、既存の決済・保証の仕組みは崩さずに、記録の形式だけを試す設計です。

証券会社の側でも基盤整備が進んでいます。Morgan StanleyはE*Tradeで暗号資産の直接取引を2026年5月に開始し、手数料は取引額の0.5%です[14]。Charles Schwabも2026年中の暗号資産現物取引の開始を掲げています[15]。扱うのは暗号資産そのもので株式トークンではありませんが、顧客口座とブロックチェーン上の資産をつなぐ導線は、大手リテール証券の中で既に敷かれ始めています。

参入の裾野は仲介業者にも広がっています。Dinariは2026年7月8日、証券取引基盤のtZERO(ティーゼロ)との提携を発表しました。既存のブローカーが自前でシステムを組まずに、トークン化株式を顧客に提供できる枠組みです[11]。発行・保管・清算・名義書換をまとめて外部提供するこの型は、既存金融でいうホワイトラベル(他社基盤の自社ブランド提供)にあたります。参入の技術的な障壁は、この時点でかなり下がったといえます。

現在の残高は米国株の0.004%、将来予測は最大4,800兆円

現在の規模から確認します。トークン化株式の残高は全世界で約4,000億円(25億米ドル、2026年8月13日時点)、保有ウォレット数は100万を超えています[17]。一方、米国株式市場の時価総額は約9,900兆円(62.2兆米ドル、2024年末)です[18]。規模比は約0.004%、およそ2万5,000分の1にとどまります(表3)。

表3 トークン化株式と既存市場の規模比較
指標数値出所
トークン化株式の残高(全世界)約4,000億円(25億米ドル、2026年8月13日時点)[17]
保有ウォレット数100万超(2026年8月時点)[17]
米国株式市場の時価総額約9,900兆円(62.2兆米ドル、2024年末)[18]
規模比(残高÷米国株時価総額)約0.004%※[17][18]
DTCの保管資産約1.8京円(114兆米ドル超、2026年5月時点)[5]

将来の市場規模の予測は、機関によって大きく開いています(図2)。対象はいずれも、株式のほか債券・ファンド・ステーブルコインなどを含む「トークン化資産全体」です。McKinseyは2030年に約320兆円(2兆米ドル)を基本シナリオとします[20]。BCGとRippleの共同レポートは2030年に約1,500兆円(9.4兆米ドル)、2033年に約3,000兆円(18.9兆米ドル)[19]。Ark Investは2030年に約1,750兆円(11兆米ドル)超[21]、Standard Charteredは2034年に約4,800兆円(30.1兆米ドル)です[22]

図2 トークン化資産の市場規模予測の比較

15倍の開きを生んでいるのは、成長率の読みの差というより対象範囲の定義です。ステーブルコインやトークン化預金を含めるか、貿易金融など株式・債券以外の資産をどこまで数えるかで、予測値は桁が変わります。株式に限れば、McKinseyはトークン化の第1波を現預金・債券・ファンドとみており、株式はその後の波に位置づけています[20]。つまり株式トークンの規模は、予測のどれをとっても「これから」の領域です。

規模の上限を左右するのは、新規の発行よりも既存資産の移行です。DTCが保管する資産は約1.8京円(114兆米ドル超)にのぼり[5]、市場インフラ統合型では、この保管資産が参加者の選択によってトークン形式の記録に切り替わり得ます。オフショア・ラッパー型が新しい残高を1件ずつ積み上げるのに対し、統合型は既存の残高がそのまま母数になります。市場規模の予測を分けるのは、この移行がどれだけ速く進むかの読みの差でもあります。

既存金融がためらう理由は自社の収益構造にある

イノベーションのジレンマとは、優良企業が既存顧客の要求に合理的に応え続けた結果、新しい市場を突く技術への対応が遅れるという経営理論です(クレイトン・クリステンセンが1997年に提唱)。この枠組みに当てはめると、既存金融の一見矛盾した行動が整理できます。

既存の株式市場の収益は、仲介の各段階に分配されています。証券会社は売買手数料と注文回送の対価を、取引所は取引手数料と市場データ収入を、清算・保管機関は決済・保管・名義書換の手数料を得ます。トークン化は、この照合事務と仲介段階を圧縮する技術です。既存プレイヤーにとってトークン化への投資は、自社の収益基盤の一部を置き換える投資になります。WFEやSIFMAが規制免除への反対を書簡で表明したのは[6][7][8]、この構造からすれば合理的な防衛です。

一方、新規参入側は既存の収益基盤を持たないため、権利を削ってでも商品性を先行させました。オフショア・ラッパー型は議決権も株主の地位もない代わりに、24時間取引・少額購入・ウォレット保有という、既存の証券口座にない商品性を提供します。主な顧客は、米国市場の取引時間にアクセスしづらい米国外の投資家、つまり既存の米国証券会社が優先してこなかった層です。性能の劣る商品が、既存企業の主要顧客ではない市場から浸食を始めるのは、破壊的イノベーションの典型的な経路です。そして権利の差は縮まり始めています。Dinariの米国内向けトークンは配当も議決権も維持しており[9][10]、「権利を削った商品」から「権利ごとオンチェーンに載せた商品」への移行が進んでいます。

既存側の応答は、破壊的な商品を自らの構造に翻訳することでした。NasdaqとDTCの座組では、トークン化株式は同一CUSIP・同一権利のまま、既存の注文板と清算保証の内側で扱われます[3][2]。商品性の新しさ(24時間・ウォレット保有)は当面取り込まず、記録技術だけを更新する。これは既存顧客への提供価値を高める持続的イノベーションの型であり、自社の収益基盤を守りながら移行する道です。どちらの型が優勢になるかを決めるのは、技術より規制です。SIFMAの主張どおり同一規則の適用が貫かれれば新規参入側の商品性は制約され、SECが免除や特例を広げれば既存側の防衛線は下がります[7][8]。防衛と取り込みは同じ社内で並走します。2026年1月にSECへ慎重対応を求めたJPMorganは[8]、その半年後、DTCCの初回本番取引に参加しています[23]

両者の中間もあります。米国の既存ブローカーであるRobinhoodは、規制の枠組みが異なるEUで先にトークン化株式を提供しました(前編参照)。本国の収益基盤と規制関係を守りながら、別の市場で破壊的な商品を試す。これもジレンマへの応答の1つです。

使い道は株主名簿の管理、個人の直接保有、証券会社への外部提供

座組の違いは、そのまま使い道の違いになっています。

  • 上場企業による株主名簿のオンチェーン化:Galaxy Digitalの事例では、名義書換代理人が取引と同時に株主名簿を更新するため、発行企業はリアルタイムの株主構成を把握できます。KYC済みウォレット間の直接移転も可能です[1]
  • 米国内投資家のセルフカストディ保有:Dinariの724銘柄は、米国の個人が自分のウォレットで米国株を保有し、配当・議決権を保持したままUSDCで売買する使い方を初めて可能にしました[9][10]
  • 既存ブローカーの相乗り参入:DinariとtZEROの枠組みは、発行・保管・清算をまとめて外部提供します。既存の証券会社が自前開発なしにトークン化株式を品揃えに加える経路です[11]

リスクの中心は規制の不確かさと、投資家が持つ権利の差にある

最大の不確実性は規制です。SIFMAは、トークン化株式も証券である以上、取引の場は既存の取引所または代替取引システム(ATS)として登録すべきだと主張しています[7]。SECがどこまで免除や特例を認めるかも、まだ確定していません。DTCのパイロットも3年間の時限付きで、トークン化された持分に担保価値を認めない限定的な設計です[2]。規制の線引き次第で、どの座組が成立するかが変わります。

型ごとの権利の差も残ります。オフショア・ラッパー型の保有者は株主の地位を持たず、発行体が破綻した場合の保全は各社の設計に依存します。IOSCOは2025年11月の報告書で2つのリスクを指摘しました[13]。投資家が「原資産を保有しているのか、トークンへの請求権だけなのか」を誤認するおそれと、暗号資産市場との連動が生む波及リスクです。WFEが問題にしたのも、規制外の第三者による発行が投資家保護を欠いたまま広がることです[6]

規模と流動性の限界も明確です。残高は米国株時価総額の約0.004%にとどまり[17][18]、市場インフラ統合型は2026年7月に初の本番取引を処理した段階で、参加者と対象を広げた本格稼働はこれからです[23]。名簿直結型もKYC済みウォレットに閉じており、DeFiでの自由な担保利用まではまだ距離があります。中枢の制度が動いたことと、規模が伴うことは別の話であり、後者はこれからの検証事項です。

規模より先に、市場の中枢の制度が動いた

この1年の変化は、規模より構造で測るのが正確です。残高約4,000億円は米国株時価総額の約0.004%にすぎません[17][18]。しかし2025年9月からの12カ月で、米国株式市場の中枢はいずれも株式トークンへ入り口を開きました。株主名簿はSuperstateとDinariが、取引所はNasdaqの承認とNYSEの申請が、清算・保管はDTCの3年パイロットが担います[1][2][3][4]。SECに慎重対応を求めたJPMorganが、その半年後にDTCCの初回本番取引へ参加したことが[8][23]、この市場の現在をよく表しています。約1.8京円のDTC保管資産は、参加者が選べばトークン形式へ切り替わる状態に既にあります[2][5]。市場規模の予測が320兆円から4,800兆円まで開くのは、この移行がどれだけ速く進むかの読みが分かれているためです[19][20][21][22]

よくある質問

株式トークンの座組とは何ですか
株式トークンの座組とは、誰が株式を保管し、誰が株主名簿を管理し、投資家が何への権利を持つかという役割分担のことです。現在動いている座組は、米国外向けで発行体への請求権にとどまるオフショア・ラッパー型、SEC登録事業者が配当・議決権を保つ名簿直結型、Nasdaq・DTCが従来の権利のままトークン化する市場インフラ統合型の3つに整理できます。
株式トークンに参入している既存金融プレイヤーはどこですか
2025年9月から2026年8月の間に、Galaxy Digital(自社株のトークン化)、Nasdaq(トークン形式取引のSEC承認)、NYSE(同種のルール変更申請)、DTC(3年間のトークン化パイロット)が動きました。2026年7月には、JPMorganやBlackRockを含む40社超が参加する初の本番取引が処理されています。Morgan StanleyやCharles Schwabも暗号資産取引の基盤整備を進めています。
トークン化株式の市場規模はどれくらいになりますか
現在の残高は全世界で約4,000億円(25億米ドル、2026年8月時点)で、米国株時価総額の約0.004%です。トークン化資産全体の将来予測は機関によって15倍開いています。最小はMcKinseyの約320兆円(2兆米ドル、2030年)、最大はStandard Charteredの約4,800兆円(30.1兆米ドル、2034年)で、開きの主因は対象資産の定義の差です。
名簿直結型とオフショア・ラッパー型はどう違いますか
名簿直結型はSEC登録の名義書換代理人が株主名簿とトークンを直結させる座組で、投資家は配当や議決権を保持できます(SuperstateやDinariが代表例)。オフショア・ラッパー型は発行体が海外の器で現物を保管しトークンを発行する座組で、投資家が持つのは発行体への請求権であり、議決権はなく対象も米国外に限られます。
なぜ既存金融は株式トークンに反対しているのですか
世界取引所連合(WFE)やSIFMAは、トークン化株式が株式と同じ経済的機能を持つ以上、同じ投資家保護と規則を適用すべきだと主張しています。背景には、規制免除を受けた新しい取引の場が広がると、既存の取引所・清算機関・証券会社に分配されている手数料収益が圧縮されるという収益構造上の事情もあります。
イノベーションのジレンマとは何ですか
優良企業が既存顧客の要求に合理的に応え続けた結果、新市場を突く技術への対応が遅れるという経営理論で、クレイトン・クリステンセンが1997年に提唱しました。株式トークンでは、既存金融が反対書簡と参入を同時に進めており、防衛と取り込みが並走するジレンマの構図が実際に観察できます。
米国の個人投資家は株式トークンを買えますか
2026年8月にDinariがS&P500全銘柄を含む724銘柄を米国内の投資家に開放し、配当・議決権を保持したままセルフカストディのウォレットで保有できるようになりました。NasdaqとDTCによる市場インフラ統合型は2026年8月時点でまだ取引開始前で、オフショア・ラッパー型は米国居住者を対象外としています。

用語集

座組
金融商品を成立させるための役割分担。契約主体・資産の保管者・リスクの負担者・収益の取り手の組み合わせを指す。
名義書換代理人(トランスファー・エージェント)
株主名簿の記録・更新を担うSEC登録の事業者。名簿直結型ではトークンの移転と名簿の更新を一致させる。
DTC
米国のほぼ全ての上場証券を保管する証券保管振替機関。DTCC(米国証券保管振替機構)の子会社。
CUSIP
北米の証券識別コード。同一CUSIPのトークン化は、従来の株式と同じ証券として扱われることを意味する。
ノーアクションレター
特定の行為について法執行を勧告しないという米当局スタッフの確認文書。DTCのパイロットはこの形式で認められた。
イノベーションのジレンマ
優良企業が既存顧客への合理的な対応を続けた結果、破壊的技術への対応が遅れるという経営理論。